補聴器をつけて働く私が学んだ、伝えることの大切さ聞こえにくさと向き合いながら働く──職場で無理せず自分らしくいるために

仕事

大学4年生のときに補聴器を導入した私は、その後すぐに就職活動の時期を迎えました。
「補聴器を使っている」ということを、どのように伝えるべきか。これは今でも私の中で悩みの種のひとつです。今回は、補聴器をつけて働くようになってから感じたこと、そして「聞こえ」に関する私の仕事のエピソードをお話ししたいと思います。

就職活動と「伝えるタイミング」

学生時代のアルバイト先では、補聴器について特に何か言われることもなく、自然に過ごしていました。そのため、就職活動を始めた当初は「わざわざ言う必要もないかな」と思い、履歴書にも面接でも何も伝えずに挑んでいました。

しかし、結果はなかなかうまくいかず…。
途中からは、「書類では書かないけれど、面接の時に正直に伝えよう」と方針を変えました。

その後、いくつかの職場を経験する中で、今では「最初に伝えること」が大切だと感じています。とはいえ、私は「障害者手帳」を持っていないため、どんな言葉で伝えるのがいいのか、今でも悩むことがあります。

最初は「聞こえにくく補聴器をしています。」という一言だけでした。

でも、仕事を変えるため面接を重ねていくうちに、少しずつ言葉が増えていきました。

「聞こえにくく補聴器をしています。病院にも通っています。」

「聞こえにくく補聴器をしています。手術の影響で定期的に病院に通院しています。」

「聞こえにくく補聴器をしています。手術の影響で定期的に病院に通院しています。電話対応は苦手です。」

「聞こえにくく補聴器をしています。手術の影響で定期的に病院に通院しています。電話対応は難しいです。補聴器をしていれば会話は一対一であれば問題ありません。でも騒がしい所や大人数だと聞き取りが大変です。」

こうして並べてみると、少しずつ自分の状況を具体的に伝えられるようになっているのが分かります。
最初のころは、短く伝えることで精一杯でした。
けれど、「どうしたら相手に伝わるか」「どんな説明なら理解してもらえるか」を考えるうちに、自然と言葉が増えていきました。

完璧な言い方は今も分かりませんが、誠実に話すことで理解してもらえる場面が増えたように思います。もしそれで残念な結果になったとしても、「今回はそういうご縁ではなかった」と気持ちを切り替えるようにしています。

職場の人との関わりと工夫

就職してからは、周囲に「こうしてほしい」と細かくお願いすることはあまりしていません。
それでも、ありがたいことに多くの職場では自然にサポートしてもらってきました。

医療現場で働いていたときには、私が気づいていないときや聞き取れていないときに、同僚がそっと肩をたたいて教えてくれたり、近くまで来て話してくれたりしました。
内緒話は、お互いに裏紙を持って筆談(笑)。
思い返すと、本当に温かい職場で、上司や同僚には感謝の気持ちでいっぱいです。

現在はパートとしてパソコン業務をしています。必要なときは同僚が近づいてきて話しかけてくれたり、机をトントンと叩いて合図してくれたりします。
おかげで「置いてけぼり」になることも少なく、「ありがとう」という言葉が自然に出てきます。

ただ、聴力は現在70dBほどになり、以前に比べると少し聞こえにくいんだと感じる場面が増えました。
補聴器をしていても、不意の雑談や遠くの声にはついていけないことがあります。
そのたびに「ごめんなさい」と思う気持ちもありますが、無理をせず、できる範囲で関わるようにしています。

「同じ悩みを持つ人」に出会って

仕事に関して最も悩むのは、「どのように伝えるか」ということです。
でも、同じように働いている人の話を聞く機会は、日常生活の中ではなかなかありません。

そんな中、ある日「社会福祉法人 聴力障害者情報文化センター」のイベントに参加する機会をいただきました。
「労働サポートグループワーク」という、聴覚障害のある方々が仕事に関する悩みを共有する場です。

初めて参加したとき、驚いたのは「みんな同じような悩みを抱えていた」ということでした。
たとえば――

  • 上司や同僚にどう伝えたらいいのか
  • 会議のときはどう対応しているのか
  • 騒がしい環境での飲み会が苦手

どの話も共感できるものばかりでした。
「私だけじゃなかったんだ」と感じた瞬間、肩の力がふっと抜けました。

話をしていて分かったのは、聞こえ方も困りごとも人それぞれだということ。
そして、話し合うことで新しい工夫やヒントが見つかるということです。
たとえば、「会議ではメモを共有してもらう」「文字起こしのアプリをしっかり使う」など、実際に試せる工夫がいくつもありました。

何より、「一人じゃない」と感じられたことが大きな支えになりました。
正解はないけれど、だからこそ人と話すことが大切。自分の性格や職場に合った方法を探すことができるのです。

このイベントをきっかけに、「もっと多くの人とつながってみたい」という気持ちが生まれました。
そして、その想いは手話の世界へとつながっていきました。
補聴器だけに頼らず、自分からコミュニケーションの手段を広げていく。
それは私にとって、新しい世界への第一歩だったように思います。

日々の小さな困りごとや伝え方に悩むことはたくさんあります。
そんな中でも、理解してくれる仲間や、同じ悩みを共有できる人がいることは本当に心強いです。

もしこの記事を読んでいる方の中に、同じような悩みを抱えている方がいたら——
「伝える勇気」と「つながることの大切さ」を、少しでも感じてもらえたら嬉しいです。

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