大人になってから聞こえにくくなり、「手話を学んでみようかな」と考えたことはありませんか。
補聴器を使いながら生活していましたが、同じように大人になってから聞こえにくくなった人と出会う機会は、なかなかありませんでした。
手話には興味があっても、「初心者でも参加できるのかな」「どんな人が通っているのかな」と分からないことばかり。
そこで私は、実際に手話講習会に参加してみることにしました。
通ってみると、手話を学べただけでなく、同じように聞こえにくさと向き合っている人との出会いや、新しい情報に触れる機会も増えました。
この記事では、私が手話講習会に通おうと思った理由や、実際に学んだこと、通って感じたこと、大変だったことを体験談として紹介します。
「手話を始めてみたいけれど少し不安」
「同じように聞こえにくくなった人と交流してみたい」
「手話講習会がどんなところか知りたい」
そんな方の参考になれば嬉しいです。
※この記事は筆者自身の体験をもとに執筆しています。手話講習会の対象者、募集時期、会場、費用、講習内容などは自治体や団体、年度によって異なります。参加を検討する際は、各自治体・団体の最新の公式情報をご確認ください。
私が手話講習会に通おうと思った理由
私が手話講習会に参加しようと思った一番の理由は、同じように大人になってから聞こえにくくなった人と出会いたかったからです。
「ほかの人は、聞こえにくさとどう付き合っているんだろう」
「仕事や日常生活で、どんな工夫をしているんだろう」
そんな疑問がありました。
インターネットで情報を調べることはできます。でも、文章を読むだけでは分からないこともあります。
「実際に同じ経験をした人に話を聞いてみたい」
そう思うようになりました。
ところが、どこへ行けば同じような人と出会えるのかが分かりませんでした。
そんな中、私が最初にたどり着いたのが、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターでした。
実際に訪れたときの様子は、こちらの記事にまとめています。
実際に訪れてみると、手話を使って会話している方も多くいました。その様子を見て、手話を知っていれば、同じような人と交流するときのコミュニケーションの方法が広がるかもしれないと思うようになりました。
「もっと同じような人と話してみたい」
「手話も学んでみたい」
そう考えていたところ、施設の方から、特定非営利活動法人東京都中途失聴・難聴者協会で手話講習会が行われていることを教えていただきました。
手話を学びながら、同じように聞こえにくさを抱えている人と出会えるかもしれない。
そう思い、思い切って申し込みました。
手話講習会ってどんなところ?初心者でも参加できる?
私が参加したのは、東京都福祉局が主催する中途失聴者・難聴者向けの手話講習会です。
最新の募集内容や対象者については、東京都福祉局の公式サイトをご確認ください。

私が参加した講習会では、4月開講と10月開講のコースがありました。
毎週決まった曜日に通い、半年ほどかけて手話を学ぶ形式でした。
クラスは入門・初級・中級・上級に分かれており、手話の経験がない人が学べる入門クラスもありました。
東京都の現在の公式案内でも、入門クラスは「手話の経験がなく、その習得に熱意のある方」を対象としており、初級・中級・上級と段階的に分かれています。講習期間や募集時期などは年度によって変わるため、参加する際は最新の募集案内を確認することが大切です。
私が通ったときも、参加者の年代や生活背景はさまざまでした。
仕事帰りに通っている方もいれば、定年後に新しいことを始めた方もいました。
聞こえ方も一人ひとり違います。
私のように大人になってから聞こえにくくなった方だけでなく、補聴器などを使っている方もいました。
教室では、分からないことを講師の先生に質問したり、受講生同士で確認したりする場面もありました。
私自身、手話はほとんど初心者でしたが、基本から少しずつ学ぶことができました。
そして、そんな講習会で迎えた初日は、今でも印象に残っています。
初めて手話講習会に参加した日の感想
初日は、各クラスの受講生が集まる開講式から始まりました。
教室に入ってまず驚いたのは、思っていた以上にたくさんの人がいたことです。
「こんなにたくさんの人がいるんだ」
それが最初の感想でした。
それまでの生活で、同じように聞こえにくさを抱えている人と出会う機会はほとんどありませんでした。
そのため、聞こえにくさについて悩んでいるのは自分だけではないと実感できたことが、とても印象に残っています。
開講式では、「音が聞こえること」と「言葉を聞き取って意味を理解すること」は同じではない、というお話がありました。
私自身、音としては聞こえていても、言葉として正確に聞き取れないことがあります。
周りからは分かりにくい部分ですが、聞こえにくさによるコミュニケーションの難しさについて、改めて考えるきっかけになりました。
そして、コミュニケーションの方法の一つとして手話があることを知りました。
私にとって手話は、それまで知らなかったコミュニケーションの選択肢の一つでした。
「手話を学んでみたい」
そんな気持ちが、より強くなったのを覚えています。
そして何より、同じように聞こえにくさを抱えている人たちがいる場所に来られたことが嬉しかったです。
「ここに来て良かった」
初日にそう思いました。
手話講習会で実際に学んだこと
入門クラス|基本的な手話と指文字からスタート
入門クラスでは、あいさつや指文字、地名など、基本的な手話から学びました。
特に印象に残っているのが「指文字」です。
指文字は、日本語の五十音を指の形で表現する方法です。
知らない単語や人の名前など、手話の表現を知らない言葉でも、一文字ずつ表すことができます。
最初は指の形を覚えるだけでも大変でした。
自分では覚えたつもりでも、相手が表現する指文字を読み取るとなかなか分かりません。
そこで毎週、指文字の歌に合わせて手を動かしたり、相手の指文字を読み取ったりする練習を繰り返しました。
続けているうちに、少しずつ読み取れるようになりました。
もちろん、今でも速い動きになると難しいと感じることはあります。
それでも、「分からない言葉があっても、指文字を使えば一文字ずつ伝えられる」ということを知ったのは、大きな発見でした。
初級クラス|自分のことを手話で伝える
初級クラスになると、日常生活で使う手話が増え、短い文章を手話で表現する練習も始まりました。
特に印象に残っているのは、一人ずつ手話でスピーチをする時間です。
自分で話したい内容を考えて文章を作り、分からない手話があれば手話辞典やインターネットで調べました。
それでも分からないところは、講師の先生に質問しながら準備を進めました。
準備をしているときは、「本当にこれで伝わるのかな」と不安になることもありました。
人前で発表するときも、やはり緊張します。
普段は声で話している内容を手話で表現してみると、思っていた以上に難しいものでした。
それでも、自分で考えたことを手話で表現する経験は、とても勉強になりました。
覚えた単語を暗記するだけではなく、実際に使ってみることで、少しずつ手話が身近になっていきました。
中級クラス|表情や顔・手の向きも意識する
中級クラスになると、文章が長くなり、手の動きだけではなく、顔の向きや視線なども意識するようになりました。
特に難しかったのが表情です。
手話を学ぶ中で、表情を使って気持ちや内容を伝えることも大切だと教わりました。
普段の生活では、自分がどんな表情をしているのかをそれほど意識していません。
そのため、手話をしながら表情まで意識することに戸惑いました。
体の向きや方向も、普段はあまり考えない部分です。
手話ではそうしたことも意識する必要があり、最初はなかなか慣れませんでした。
もう一つ印象に残ったのが、同じ内容でも表現の仕方が一つとは限らないことです。
最初のころは、
「どれを覚えれば正解なんだろう」
と迷うこともありました。
しかし、学んでいくうちに、単語を一つひとつ覚えるだけではなく、相手にどう伝えるかを考えることも大切なのだと感じるようになりました。
手話を学ぶことを通して、私は「伝える」ということそのものについて考えるようになりました。
上級クラス|自分で考えて表現する
上級クラスでは、自分で考えた内容を手話で表現する時間がさらに増えました。
最後の修了式では、受講生みんなで発表内容を考えました。
一人で準備するのではなく、みんなで意見を出し合いながら内容を決め、何度も練習しました。
本番が近づくと、細かい部分を確認するために練習することもありました。
そして、発表が終わったときには、大きな達成感がありました。
振り返ってみると、講習会で学んだのは手話だけではありません。
「相手に伝わるようにするにはどうすればいいのか」
「自分が伝えたいことをどう表現すればいいのか」
ということも考えるようになりました。
これは、私が手話講習会に通って得た大きな学びの一つです。
手話講習会に通って良かったこと
手話講習会に通って一番良かったと感じているのは、手話を学べたことだけではありません。
私にとって一番大きかったのは、同じように聞こえにくさと向き合いながら生活している人と出会えたことです。
それまで私の周りには、聞こえにくさについて気軽に話せる相手がほとんどいませんでした。
講習会では、仕事を続けながら通っている方や、年齢を重ねてから新しいことに挑戦している方など、さまざまな経験を持つ人と出会うことができました。
生活環境や悩みはそれぞれ違います。
それでも、聞こえにくさと向き合いながら生活しているという共通点があり、その姿に励まされることが何度もありました。
また、聞こえに関するイベントや制度など、自分一人では知らなかった情報を教えてもらう機会もありました。
手話を学ぶことはもちろんですが、私にとっては「同じような経験をしている人と出会えたこと」が大きな収穫でした。
一人で情報を探していたときとは違い、人と話すことで知ることもあるのだと感じました。
手話講習会に通って大変だったこと
大学生以来、久しぶりに毎週同じ場所へ通い、講義を受ける生活は新鮮でした。
私が参加したのは夜のクラスだったため、仕事を終えてから通っている方も多くいました。
働いている方と出会いたいと思っていたので、その点では嬉しく、休憩時間などにいろいろな話ができたことも印象に残っています。
一方で、仕事を終えてからさらに頭を使うのは、思っていた以上に体力が必要でした。
帰宅してから家事もあるため、時間の使い方に慣れるまでは少し大変でした。
また、初級クラスからは宿題や手話でのスピーチもありました。
スピーチの準備では、自分が伝えたい文章を考え、分からない手話を調べます。
それでも分からないところは講師の先生に質問し、その後、実際に手を動かして練習しました。
人前で手話をするのは緊張しましたが、発表を終えたときには、ほっとした気持ちと達成感がありました。
もう一つ難しかったのが、手話には表現方法が一つだけではないということです。
最初は「どれを覚えればいいのだろう」と混乱することもありました。
学んでいくうちに、相手や場面に合わせて表現を考えることもあると分かり、少しずつ慣れていきました。
大変なこともありましたが、一緒に学ぶ仲間がいたからこそ、続けることができたのだと思います。
手話は聞こえにくい人全員に必要なの?
聞こえにくさは、人によってさまざまです。
補聴器を使ってコミュニケーションをしている人もいれば、文字による情報や要約筆記、アプリなど、自分に合った方法を取り入れている人もいます。
手話も、その中の一つのコミュニケーション方法です。
普段の生活で手話を必要としていない人もいると思います。
私自身も、手話を始める前は「本当に自分に必要なのかな」と思っていました。
それでも実際に学んでみると、手話を使って話せる人と出会ったり、聞こえに関する情報を知ったりと、それまで知らなかった世界が少しずつ広がっていきました。
また、普段とは違う状況でのコミュニケーションについて考えるきっかけにもなりました。
手話が必要かどうかは、人によって違います。
「手話を覚えなければいけない」と考えるのではなく、自分に合ったコミュニケーション方法の一つとして、興味があれば学んでみる。
私は、そんな始め方でもいいと思っています。
これから手話講習会に参加したい方へ
手話講習会に興味があっても、
「初心者でも大丈夫かな」
「一人で参加するのは少し不安」
と迷う方もいると思います。
私も最初は同じでした。
実際に通ってみると、入門クラスでは基本から学ぶことができ、少しずつ手話に慣れていきました。
そして、私の場合は手話を学ぶこと以上に、同じような聞こえにくさを抱えている人と出会えたことが大きな経験になりました。
もちろん、毎週通うことや復習、スピーチの準備など、大変に感じることもあります。
それでも、
「手話を覚えてみたい」
「同じような人と話してみたい」
そんな気持ちがあるなら、まずは自分の住んでいる地域で手話を学べる場所を探してみてはいかがでしょうか。
募集時期や対象者、費用などは地域や年度によって違うため、参加する前に自治体や主催団体の公式情報を確認してみてください。
私が手話を学べる場所を探したときに調べた方法については、こちらの記事にまとめています。
まとめ|手話講習会で広がった新しいつながり
大人になってから聞こえにくくなった私にとって、手話講習会は手話を学ぶだけの場所ではありませんでした。
同じように聞こえにくさと向き合っている人と出会い、それぞれの経験や生活について話せたことは、私にとって大きな経験になりました。
コミュニケーションの方法は人によって違います。
その中で、手話に興味があるなら、学んでみるのも一つの方法だと思います。
私も最初は初心者でした。
それでも一歩踏み出したことで、手話だけでなく、新しい人とのつながりや、それまで知らなかった情報に触れることができました。
私にとって手話講習会は、手話を学ぶ場所であると同時に、聞こえにくくなった後の世界を少し広げてくれた場所でした。



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