難聴者でも参加しやすいイベントとは?東京国際ろう芸術祭に参加した体験談

日常生活

「聞こえにくいとイベントは楽しめない」と思っていた

「人が多い場所は会話が聞き取りにくい」
「舞台や映画は音声が分からないと楽しめない」
「イベントに参加しても置いていかれる気がする」

後天的に聞こえにくくなった私は、徐々にそう感じることが少なくありませんでした。

特に中途失聴や難聴の場合、子どもの頃から手話に触れてきたわけではない人も多く、「聞こえる世界」と「聞こえない世界」の間で戸惑うことがあります。

私自身も、聞こえにくくなってから初めて「情報保障」という言葉を知りました。

「情報保障」とは、字幕・手話通訳・要約筆記などを通じて、必要な情報を受け取りやすくするための支援や工夫のことです。

そんな中で参加したのが、2025年11月に開催された「東京国際ろう芸術祭」です。

このイベントでは、手話通訳や字幕表示など、聞こえに不安がある人でも参加しやすい工夫が数多く取り入れられていました。

そして実際に参加して感じたのは、

「聞こえにくくても、安心して楽しめるイベントは存在する」

ということでした。

今回は、東京国際ろう芸術祭に参加して感じたことを、後天的に聞こえにくくなった立場から体験談としてまとめます。

また、

  • 難聴でも参加しやすいイベントとはどんなものか
  • 情報保障があるイベントの安心感
  • 手話文化やろう文化に触れて感じたこと
  • 聞こえにくくなってから広がった価値観

についてもお伝えします。

「聞こえにくくなってから外出やイベント参加が減った」
「同じような立場の人の体験談を知りたい」

そんな方の参考になれば嬉しいです。


東京国際ろう芸術祭とは?

東京国際ろう芸術祭は、ろう者・難聴者を中心とした芸術文化を発信するイベントです。

もともとは「ろう映画祭」として開催されていましたが、2025年からは映画だけではなく、舞台・パフォーマンス・トークイベントなどを含む総合芸術祭へと発展しました。

映画祭ではなく芸術祭になった背景には、「ろう芸術」や「ろう文化」そのものを知ってほしい、という思いがあったそうです。

会場は東京都杉並区の「座・高円寺」を中心に、高円寺エリア全体で開催されていました。

実際に街を歩いてみると、駅周辺や会場付近では自然に手話で会話をしている人が多く、まるで「手話のまち」に来たような感覚になります。

聞こえにくくなってから、私は無意識のうちに「聞き取れないかもしれない」という不安を抱えるようになっていました。

しかし、この空間では「音声だけがコミュニケーションではない」という空気が自然に存在していて、不思議と安心感がありました。

大きな声で頑張って聞き取らなくてもいい。

聞き返すことを申し訳なく思わなくてもいい。

それだけで、気持ちがかなり楽になるのだと実感しました。

※東京国際ろう芸術祭の詳細は、2025年開催時の公式サイトをご参照ください。

手話のまち 東京国際ろう芸術祭2025
手話のまち 東京国際ろう芸術祭は、ろう芸術文化で世界とつながる祭典。2025年11月6日〜9日、座・高円寺で開催!舞台・映画・手話の市など盛りだくさん!

雨の日に立ち寄った「のびのびカフェ」

その日は雨で少し肌寒く、会場で温かいカフェラテを購入しました。 出店していたのは「のびのびカフェ」さん。

 オーナーが聞こえない方で、新潟県長岡市の「NOBI by SUZUKI COFFEE」を運営されているそうです。

 調べた所「のびのびカフェ」という名前には、「のびのびと過ごしてほしい」という思いが込められているそうです。

雨の影響もあってブースはとても賑わっていましたが、温かい飲み物と穏やかな雰囲気にほっとしたのを覚えています。

もし長岡を訪れる機会があれば、今度は店舗にも足を運んでみたいと思いました。


後天的に聞こえにくくなってから、イベント参加に不安を感じることがあった

中途失聴や難聴になると、イベントや集まりへの参加ハードルが急に上がることがあります。

例えば、こんな経験はないでしょうか。

  • 周囲の会話についていけない
  • マスク越しだと聞き取りにくい
  • アナウンスが聞こえない
  • 映画や舞台でセリフが分からない
  • 大人数の空間が疲れる
  • 聞き返しが続いて気まずい

私自身、聞き取れなかった内容を推測したり、何度も聞き返したりするうちに、イベントに参加そのものに不安を感じることもありました。

  • ・肝心な所で何を言っているのか分からない
  • ・周囲の笑いや拍手についていけない

こんなことも、イベントから足が遠のく要因となっていました。

特に後天的な難聴の場合、周囲から気づかれにくいことも多いです。

見た目では分からないため、困っていても理解されにくい。

その結果、外出そのものを控えるようになる人も少なくありません。

だからこそ、情報保障のあるイベントの存在はとても大切だと感じます。

「聞こえにくい人も参加していい」ではなく、

「最初から参加できる前提で作られている」

この違いは非常に大きいです。

今回、東京国際ろう芸術祭に参加して感じたのは、「自分だけではない」という安心感です。

補聴器を使う人、人工内耳の人、手話を使う人など、さまざまな人が自然に同じ空間にいました。

その光景を見て、「聞こえにくくなったから世界が狭くなるわけではない」と感じました。もし今、外出やイベント参加に不安を感じているなら、情報保障のあるイベントを探してみるのも一つの方法かもしれません。

無理をしなくても、参加しやすい環境が用意されている場所は少しずつ増えています。


実際に体験した「情報保障」の安心感

今回参加したトークイベントでは、複数の情報保障が用意されていました。

具体的には、

  • 音声
  • 日本語手話通訳
  • 国際手話通訳
  • リアルタイム文字起こし

などです。

リアルタイム文字起こしは、聞き漏らした部分を視覚的に確認できるため、難聴者にとって非常に助かります。

また、手話通訳があることで、ろう者の方も同じ空間を共有できます。

今回参加した会場では、UDトークを活用したリアルタイム字幕が表示されていました。

※UDトークについては公式サイトをご参照ください。

UDトーク
コミュニケーション支援・会話の見える化アプリ

初めてリアルタイム字幕を体験しましたが、次々出てくる文字情報に感動しました。

実際に何を話しているかが、分かりその場で理解することが出来るのです。

話している内容をその場で確認できるため、安心して参加することができました。

聞こえにくい人にとって、字幕や文字情報は安心材料の一つです。

聞こえ方や困りごとは人によって異なりますが、私にとってはリアルタイム字幕の存在が大きな安心につながりました。

特に後天的難聴の場合、「聞き逃したらどうしよう」という緊張感や不安を抱えやすいため、視覚的な情報があるだけで疲労感がかなり変わります。


「聞こえない文化」に触れて、自分の常識が変わった

「トークイベント Teater 5005の会場案内」

特に印象に残ったのは、デンマークのろう者俳優を中心とした劇団「Teater 5005」のトークイベントです。
音声だけではなく、身体表現や手話を重視した創作について語られていました。

私は学生時代に演劇をしていた経験があります。

資金集めの話題になったとき、私は思わずうなりました。

創作の現実的な苦労は、聞こえる・聞こえないに関係ない。

課題は共通し、表現方法が違うだけなのです。

印象的だったのは創作の仕方です。

経験から、演劇とは「まず脚本があり、その後に演出や動きが決まるもの」と思っていました。

しかし、彼らの創作方法は違いました。

  • 手話や身体表現が先にある
  • そこから物語が生まれる
  • 音声や字幕は補助的な役割

という形で創作が進んでいました。

最初は驚きました。

ですが同時に私の今までの認識は、「音声中心の世界の視点」だということに気づかされました。

考えてみれば、表現方法に正解はありません。

音だけではなく、身体・表情・視線・空気感など、コミュニケーションにはさまざまな要素があります。

正解がないからこそ、ワクワクやドキドキが生まれる。そう気付いたとき、私は少し恥ずかしくなりました。

同時に、ゼロから生み出す楽しさや難しさを、もう一度味わってみたいという気持ちも湧いてきました。学生時代に演劇をしていたあの頃の感覚が、静かに蘇ってきました。

聞こえにくくなってから、私は以前よりも相手の表情を見るようになりました。

文字を読む機会も増えました。

ある意味では、「音声だけに頼らないコミュニケーション」を少しずつ学んでいるのかもしれません。

この芸術祭では、そうした価値観を自然に受け入れられる空気がありました。


情報保障があるイベントは、誰にとっても参加しやすい

今回参加して感じたのは、聞こえにくい人も参加しやすいイベントは、決して「特別なイベント」ではないということです。

むしろ、情報保障があることで、多くの人にとって分かりやすい空間になっていました。

印象的だったのは、「特別扱い」としてではなく、自然に情報保障が用意されていたことです。

聞こえる人だけを前提にした空間ではなく、さまざまな人が参加する前提で設計されている。

その空気感そのものが、とても心地よく感じました。

例えば、リアルタイム字幕は、

  • 日本語が母語ではない人
  • 高齢者
  • 周囲が騒がしく聞き取りにくい人
  • 一時的に体調が悪い人

にとっても役立ちます。

これは「誰かだけのための配慮」ではなく、結果として多くの人を助ける仕組みなのだと思います。

最近は映画館でも字幕上映が増えたり、自治体イベントで要約筆記が導入されたりするなど、少しずつ環境が変わってきています。

ただ、まだ「聞こえにくい人でも楽しめるイベントがある」という情報自体を知らない人も多いと感じます。

だからこそ、実際に参加した体験を発信することには意味があると思っています。


難聴者・中途失聴者がイベント参加前に確認したいポイント

私自身の体験を踏まえると、聞こえにくい人がイベントへ参加する際は、事前に次の点を確認しておくと安心です。

  • 字幕や文字支援はあるか

リアルタイム字幕や要約筆記があると、聞き取りの負担がかなり軽減されます。

今回は聞こえに関するイベントだったため字幕対応がありましたが、一般的なイベントでは対応していない場合も多いと感じます。なので、公式サイトや問い合わせフォームで確認してみるのがおすすめです。

  • 手話通訳の有無

手話を使用する方には、安心材料になります。手話通訳の方と一緒にイベントに参加するという方法もあります。

  • 座席位置

前方の席のほうが話者の声の大きさだけではなく表情や口元を確認しやすい場合があります。

以前、聞こえとは関係ない所でセミナーに参加しました。その際、事前に勇気をもって「聞こえにくさがあり、補聴器を使用しています」「配慮としては席を前の方にしてもらいたいです。」と伝えました。

結果は、快く対応していただき前の席で最後まで話を聞くことが出来ました。

  • 音響環境

反響が強い会場は補聴器だと聞き取りづらいことがあります。会場アナウンスなどを聞き逃さないようにする必要があるかもしれません。実際にコンサートホールに行った時は、休憩の長さが分かりませんでした。会場内に時間の掲示もなかったので、その時は家族に教えてもらいました。

  • 問い合わせしやすいか

分からないことがある場合、事前に問い合わせできるかも重要です。
最近は、メールやフォームで情報保障について相談できるイベントも増えてきています。

イベントによって配慮内容は異なるため、事前に確認しておくだけでも安心感が大きく変わると感じています。


これからは「参加できるイベント」をもっと知りたい

今回の体験を通して、私は「聞こえにくい人も楽しめるイベントは確実に存在する」と実感しました。

そして同時に、まだその情報が十分に届いていないとも感じています。

後天的に聞こえにくくなると、以前できていたこととのギャップに悩むことがあります。

でも、環境や情報保障によって、楽しめることは確実に増えます。

私自身、今回の芸術祭で「また参加したい」と素直に思えました。

聞こえにくさがあるから諦めるのではなく、自分に合った方法で参加できる。

そんな選択肢がもっと広がってほしいと思います。


まとめ|聞こえにくくても、安心して参加できる場所はある

東京国際ろう芸術祭は、単なるイベントではありませんでした。

それは、
「聞こえにくくても参加していい場所」ではなく、
「最初から誰もが参加しやすいよう工夫された場所」
だったと感じています。

聞こえにくくなると、孤独感や不安を抱えることがあります。

しかし、同じような立場の人や、多様なコミュニケーションを自然に受け入れている空間に触れることで、気持ちが少し軽くなることもあります。

もし今、聞こえにくさによって外出やイベント参加に不安を感じているなら、情報保障のあるイベントを一度探してみてください。

最近は、字幕対応上映や情報保障付きイベントも少しずつ増えています。
「情報保障 イベント」「字幕付き上映 地域名」などで検索すると、参加しやすいイベントが見つかるかもしれません。

私自身も、これからさらに、聞こえにくくても参加しやすいイベントをもっと知りたいと思っています。

今回のように情報保障が整ったイベントが増えることで、外出や交流へのハードルが少しずつ下がっていけばいいなと感じています。

このブログでは、後天的に聞こえにくくなってから感じたことや、日常生活で工夫していることも発信しています。

補聴器を使い始めて感じたことについては、こちらの記事でもまとめています。


同じような悩みを持つ方の参考になれば嬉しいです。

※本記事は筆者個人の体験をもとに執筆しています。聞こえ方や困りごとには個人差があります。医療的助言を目的としたものではありません。必要に応じて医療機関や専門機関へご相談ください。

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