※この記事は筆者個人の体験談です。
聞こえ方や補聴器の適合には個人差があります。
補聴器の必要性や種類については、耳鼻咽喉科医や認定補聴器技能者などの専門家へご相談ください。
現在、私は両耳に補聴器をつけて生活しています。
今では毎日のように使っていますが、最初から補聴器に前向きだったわけではありません。
「まだ必要ないかもしれない」
「補聴器を使うのはもっと先の話では?」
そんな気持ちがずっとありました。
この記事では、大学生だった私が初めて補聴器を購入するまでの話と、そのとき感じたことを振り返ってみたいと思います。
当時の私と同じように、「まだ補聴器は早いのでは」と迷っている方に読んでもらえたら嬉しいです。
大学生になるまで補聴器は考えていなかった
当時は今より聞こえていたものの、他の人と比べると聞き取れていない部分もありました。しかし、自分の中ではそれが当たり前でした。
「学校では前の席に座る。」
「テストの範囲・提出物の期限など重要なもので、不安がある場合には友達に確認する。」
そんな生活だったので、「補聴器が必要」という発想はほとんどありませんでした。
実際、大学に入ってからもしばらくは大きな問題なく過ごしていました。
授業は教科書も見ながら対応する。
先生や友人との交流も、話す際は少人数だったのでそこまで困ったと感じたこともなかったのです。
ところが、大学4年生になって就職活動やアルバイトなど学外に出る時間が増えたことで、少しずつ状況が変わっていきます。
アルバイトで感じ始めた小さな違和感
当時、私はレジのアルバイトをしていました。
店内にはさまざまな音があります。
お客様の話し声。
店内に流れる曲
スタッフ同士の会話。
そうした音が一度に耳へ入ってくる環境でした。
その中で働いていると、以前は気にならなかったことが増えていきました。
お客様の言葉を推測しているかもしれない自分。
後ろから呼ばれても気づきにくい。
他の人と話しているとそちらに、集中しがち。
「聞こえない」のではなく、「聞こえているけれど言葉として分からない」という感覚でした。
音は入ってきている。
でも何を言われたのか理解できない。
この感覚は、自分でもうまく説明できませんでした。
授業中は何とか対応できていた聞こえ方が、仕事の現場では通用しなくなっていたのです。
就職活動が始まったことも、「聞こえ」に意識を向けるきっかけになっていました。
これから、「働く」にあたって、対応しないといけない。そう感じました。
そして、頭の片隅にあった「補聴器」の存在が出てきました。
大学病院で聞こえについて相談した
私は耳の手術を受けた経験があり、大学病院へ定期的に通院していました。(現在も当時の病院は変わっていますが、通院中)
ある診察の日。
ある日、意を決して「聞こえ方」について医師に相談してみることにしました。
「就職活動が始まったのですが、補聴器って使った方がいいですか?アルバイトしてて聞き取りにくくなっているような・・・・」
すると医師は意外なほどあっさりと答えました。
「あなたの場合、補聴器を考えていいレベルだね。」
その時の正直な気持ちは驚きでした。
診察室を出たあとも、その言葉が頭の中をぐるぐる回っていました。
同時に、こんな気持ちもありました。
――なぜ、それをもっと早く教えてくれなかったのだろう。
心の中でそう叫んだことを、今でも覚えています。 もちろん医療には判断のタイミングがあります。それは理解しています。
「聞こえ」と付き合っていて、補聴器が必要な時は先生から提案されるものだろうと思っていました。
なので、当時の私は自ら聞いたものの少しモヤモヤした複雑な気持ちを抱えました。
補聴器の相談は思っていたよりも難しかった
大学病院で補聴器の話を聞いたあと、手話サークルや難聴当事者の方と話す機会が増えました。
そこで意外だったのは、多くの人が私と同じような経験をしていたことです。
「自分から相談した」
「聞こえにくさを伝えて初めて話が進んだ」
そんな話を聞きました。
そう考えると、今も昔も状況はあまり変わらないのかもしれません。
聞こえにくさがあっても、補聴器の話が自然に出るとは限りません。
医師から提案される場合もありますが、自分から困りごとを伝えたことで初めて相談につながったという人も少なくありませんでした。
聞こえにくさは外から見えません。
どのように聞こえているのかも人によって異なります。
だからこそ、自分が困っていることを言葉にしない限り、周囲には伝わりにくいのだと思います。
ただ、実際にはそれが簡単ではありませんでした。
私自身も、
- まだ大丈夫かもしれない
- 補聴器は早いのではないか
- 何を相談したらいいのか分からない
そんな気持ちがありました。
聞こえにくさは少しずつ進むことも多いため、自分でも困りごとを整理できていないことがあります。
今振り返ると、医師に相談するときは「聞こえるか聞こえないか」だけでなく、日常生活で困っている場面を具体的に伝えることが大切だったと感じています。
そして、医療現場でも「具体的」に確認してもらえると助かるということです。
例えば、
- アルバイトで聞き返しが増えた
- 後ろから呼ばれても気付きにくい
- 騒がしい場所で会話が分かりにくい
- 電車のアナウンスを聞き逃すことがある
といったことです。
こうした具体的な出来事があると、自分自身も困りごとを整理しやすくなりますし、医師にも状況を伝えやすくなります。
私自身、もっと早い段階で生活の中の困りごとを相談していればよかったと思っています。
補聴器を検討する目安を後から知った
当時の私の聴力は、おおよそ50〜60dB程度だったと記憶しています。
補聴器を使い始めてから調べる中で、世界保健機関(WHO)が公表している聴力区分について知りました。
WHOでは聴力レベルによって聞こえの程度を分類しており、40dB以上では日常会話の聞き取りに影響が出る場合があるとされています。私自身も当時の聴力を振り返ると、アルバイトや就職活動で困りごとが増えていた時期と重なっていました。
私自身はこの基準を後から知りましたが、もし学生時代に知っていたら、もう少し早く相談できていたかもしれません。
ただし、聞こえ方や生活上の困りごとには個人差があります。補聴器の必要性については、耳鼻咽喉科医や補聴器専門職に相談しながら判断することが大切です。
参考資料

初めて補聴器を試した日のこと
病院で試聴した日のことは、今でも覚えています。
最初に感じたのは、人の声以外も聞こえる。
ということでした。
院内の空調の音。
物を運ぶカートの音。
今まで意識していなかった音が次々と耳に入ってきます。
嬉しく思いながら、帰宅しました。
しかしながら正直に言うと、
私は補聴器をつければすぐ快適になると思っていました。
しかし実際はそうではありませんでした。
私の感覚ですが、補聴器をしていると人の声よりも周囲の風の音など環境音を先に拾っている気がします。その為、肝心な会話がはっきりと聞こえないことも。
そのようなことも含めて、聞こえる世界に慣れる時間が必要だったのです。
今では、しっかり会話したいとき、家では窓を閉め風の音が入らないようにする。外では雨・風が強い、救急車が通る時などは無理に会話しない。
自然とそんな対応をとったりしています。
初めて補聴器をつけてアルバイトへ行った日のこと
いざ、補聴器を付けたままアルバイトに行った時は、「本当に役に立つのかな」「周りに気づかれないかな」と不安がありました。
レジの仕事ではお客様と会話する場面が多かったため、少しでも聞き取りやすくなればという期待もありました。
実際につけて働いてみると、聞こえるという安心感がありました。今まで、無意識に「聞くこと」に集中していたのだと改めて実感しました。
一方で、期待していたように「すべてがはっきり聞こえる」わけではありませんでした。周囲の音が増えたことで、かえって会話に集中しづらく感じる場面もありました。
また、慣れていないこともあり、音の方角が分からなくなることも少しありました。
それでも、お客様の声を聞き返す回数は少し減ったように感じました。
一緒に働いている方との会話がきちんと出来るようになったとも感じました。雑談でもそこまで疲れずについていくことが出来たのです。
完全に聞き取れるわけではなくても、「聞こえないかもしれない」という不安が以前より小さくなったのは大きな変化でした。
その経験が、卒業後働く際に怖がることなく補聴器を使用していくことに繋がったと思います。
実際に社会人になってからの仕事と補聴器の付き合い方については、別の記事で詳しくまとめています。
補聴器選びは分からないことばかりだった
当時の私は補聴器についてほとんど知識がありませんでした。
メーカーの違いも分からない。(テレビコマーシャルなどで一つではない。そんな程度)
価格の相場も分からない。
どんな機能が必要なのかも分からない。(色々説明されても機能自体が理解出来なったです。)
等々。
なので当然のように、病院付の補聴器メーカーで購入することに。
毎週、メーカーの方が病院にいらしていたのでそのタイミングで対応してもらいました。
ですが、購入しようと決めたのは私ですが、主体的になれていなかったように思います。「何が分からないのか、自分でも分からない」そう伝えることが出来ていませんでした。
紹介してもらった際には、金額の高さに驚きました。生活の質を維持する為には必要なものですが、金銭面での補助の対象外でした。年齢・障害者手帳どちらにも該当しなかったのです。両親が助けてくれ感謝しかありません。大学生だった私は、買い替えが必要になった時に為に、補聴器の為に貯金しなければ。出来るだけ両親に負担をかけないようにしなければと思ったのです。
今振り返ると、
- 金額
- 調整の重要性
- アフターサポート
- 通院のしやすさ、店舗への行きやすさ
- 自分の生活との相性
なども知っておきたかったと思います。
ただ、当時の私にとっては完璧な選択をすることより、「まず使い始めること」の方が大切だったように感じます。同時に使用するのは「私自身」なので、補聴器店の方ともっとコミュニケーションを取れればよかったとも感じます。
今だから思うこと
大学生だった頃の私は、補聴器をまだ必要ないと思いたい。無くても大丈夫。人にあまり言いたくない。
そんな気持ちもありました。
実際に、補聴器を使用してることを言わない。髪の毛で隠してみる。このようなこともありました。
当時は「見られたくない」という気持ちがあったのですが、今は考え方も少し変わっています。その経緯については別の記事で詳しく書いています。
それでも同時に、「魔法のアイテム」のように思っていました。
しかし、使用したからと言って完全に聞こえるようになるわけではありません。
自分の出来るだけ良き相棒になれるよう「調整」が必要だったのです。
そのことが、分かった今では定期的に補聴器店に行って点検・調整をしてもらっています。
でも今振り返ると、補聴器を使うかどうかで悩み続けるより、一度相談してみる方が気持ちは楽だったと思います。
補聴器は特別なものではありません。
眼鏡と同じように、生活を支える道具の一つです。
もちろん必要かどうかは人それぞれです。
私自身、もっと早く相談していればよかったと思っています。
まとめ
私が補聴器を使い始めたのは大学4年生のときでした。
聞こえにくさは以前からありましたが、改めて考えると、本当に困り始めたのはアルバイトや就職活動など、人との関わりが増えた時期だったように思います。
実際に使い始めてからも戸惑うことはたくさんありました。
それでも今は、あのとき相談してよかったと思っています。
もしこの記事を読んでいる方の中に、
「最近聞き返しが増えた」
「補聴器を勧められているけれど迷っている」
そんな方がいたら、具体的な日常生活の場面を考えてみてはいかがてしょうか。
テレビの音量はどうか。
仕事や学校で困る場面はないか。(なんとなくで返事をしていることが増えていないか。)
家族との会話で聞き返しは増えていないか。
私の場合は、アルバイトで感じた聞き取りにくさが補聴器を考えるきっかけになりました。
補聴器との付き合いは今も続いていきます。使い始めた頃には分からなかったこともたくさんありました。これからも、使っていて感じたことや困ったことを自分の言葉で残していきたいと思います。



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