今回は、「聞こえ」に困ったときに、そっと手に取ってもらえると役立つ冊子を紹介したいと思います。
私自身、聞こえに支障が出始めた頃、とりあえず補聴器を使い始めました。ただ、当時は右も左も分からない状態だったというのが正直なところです。補聴器をつけていれば、ひとまず音は聞こえている。そんな感覚もあり、「聞こえにくいことで自分が何に困っているのか」「それを周囲にどう伝えればいいのか」ということまで、なかなか考えが及びませんでした。
社会人になってからも、状況は大きく変わらなかったように思います。前回アップした「補聴器をつけて働く私が学んだ、伝えることの大切さ」でも書きましたが、就職活動や仕事の場面でも、補聴器を使用していることを含め、最初の頃はあまり詳しく伝えていませんでした。
ただ、心のどこかで「きちんと伝えたほうがいいのかもしれない」という思いはありました。けれど、「どうやって伝えればいいのか」「聞こえにくい生活って、周りから見るとどんなふうに映るのだろうか」。そうしたことを考え始めたのは、病院を変えたこと、そして比較的聴力の良かった方の耳にも手術が必要になったことが、大きなきっかけだったように感じています。
幼い頃から通っていた病院は、担当医の退職などをきっかけに変更することになりました。病院を変えるということは、これまでの経過や自分の状態を、自分自身の言葉で説明する必要があるということでもあります。そのとき初めて、「私は分かっているつもりで、実はあまり分かっていなかったのかもしれない」と気づきました。
小さい頃は、母が医師とのやりとりをしてくれていました。一人で通院するようになってからも、過去の手術内容や経過について、実はあいまいなままだったのです。さらに、良かった方の耳まで手術となると、今までと同じ聞こえでいられる保証はありません。「もし、もっと聞こえにくくなったらどうしよう」「そのとき、自分はどうしていけばいいのだろう」。そんな不安が、少しずつ大きくなっていきました。
これから先、聞こえにくさとどう向き合っていくのか。自分自身が理解し、必要なときには周囲にも伝えていく。そのためのヒントや言葉が欲しいと感じるようになりました。
そんなときに役立つのが、今回ご紹介する冊子たちです。自分の気持ちや状況を整理するためにも、そして誰かに伝えるときにも、そっと支えてくれる存在だと思っています。
「聞こえに困ったら 〜聞こえにくさを感じ始めているあなたへ〜」
まずご紹介したいのは、特定非営利活動法人 東京都中途失聴・難聴者協会より発行されている
「聞こえに困ったら 〜聞こえにくさを感じ始めているあなたへ〜」 です。
この冊子には、自分の聞こえにくさがどの程度なのか、そしてそれを周囲にどう説明し、どのように支援を求めていけばよいのかが、分かりやすくまとめられています。
私は手話講習会に通い始めてから、この冊子のことを知りました。最初に思ったのは、「ヒントや言葉が欲しいと感じていた自分に教えてあげたかったな」ということです。特に印象に残ったのは、「何が聞こえて、何が聞こえないかを理解する」という部分でした。日常のさまざまな場面を振り返りながら、自分の聞こえ方を改めて見つめ直すきっかけになりました。
こちらの冊子は、インターネットから閲覧することができます。
https://www.tonancyo.org/kikoe/kikoepanfrett.html
また、第二弾として、家族や周囲の方のための冊子も用意されています。こちらは購入のみとなりますが、身近な人に理解してもらうためのツールとして、とても心強いものだと感じました。相互理解のための冊子は他にもあるようですので、興味のある方はぜひ調べてみてください。
https://www.tonancyo.org/products.html
「We Love コミュニケーション」
次にご紹介するのは、聴覚障害者制度改革推進中央本部が発行している
「We Love コミュニケーション」 です。
聴覚障害者制度改革推進中央本部は、当事者団体と手話通訳・要約筆記などの支援者団体で構成されている組織です。すべての人が情報やコミュニケーションにアクセスできる社会を目指し、その活動を広める目的で作成された冊子です。
この冊子では、聞こえにくい人がどのような場面で困りやすいのか、また、どのようなコミュニケーション方法があるのかが具体的に紹介されています。同じように聞こえにくさを感じていても、合う方法や必要な支援は人それぞれ違います。そのことが、とても丁寧に伝えられていると感じました。
こちらは購入が必要となるようですが、私は区のイベントで、聴覚障害者団体のブースに立ち寄った際に出会いました。こうした偶然の出会いも、大切なきっかけになるのだと思います。
https://www.jfd.or.jp/2010/11/04/pid2386
おわりに
今回は、2冊の冊子を紹介させていただきました。地域や団体によっては、ほかにもさまざまな冊子が作られているかもしれません。周囲の方に自分の状況を伝えるとき、言葉だけでは難しいことも、こうした冊子が助けになる場面があると思います。
「どう伝えたらいいか分からない」と感じている方に、少しでも参考になれば嬉しいです。ぜひ、無理のない形で活用してみてくださいね。
今年のブログ更新は、今回で最後となります。夏から始めたこのブログですが、読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。これからも、自分の経験や、少しでも役に立つ情報をお伝えしていけたらと思っています。
1月の更新は回数が少なくなる予定ですが、引き続きよろしくお願いします。

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