「聞こえにくいけれど、どう伝えればいいか分からない」
そんなふうに感じたことはありませんか。
この記事では、
- 聞こえにくさをどう整理すればいいのか
- 周囲にどう伝えればいいのか
- そのヒントになる冊子
をご紹介します。
私自身、聞こえに支障が出始めた頃、とりあえず補聴器を使い始めました。ただ、当時は右も左も分からない状態だったというのが正直なところです。補聴器をつけていれば、ひとまず音は聞こえている。だから「なんとかなる」と思っていました。
でも実際には、
- 複数人が話すと追いつけない
- 後ろから話しかけられると分からない
- 雑音が多い場所では内容が抜ける
そんな場面がたくさんありました。
それでも当時の私は、自分がどんな場面で困っているのか、うまく整理できていませんでした。
社会人になってからも、状況は大きく変わらなかったように思います。前回アップした🔗「補聴器をつけて働く私が学んだ、伝えることの大切さ」でも書きましたが、就職活動や仕事の場面でも、補聴器を使用していることを含め、最初の頃はあまり詳しく伝えていませんでした。
「きちんと伝えたほうがいいのかもしれない」と考え始めたのは、病院を変えたこと、そして比較的聴力の良かった方の耳にも手術が必要になったことが、大きなきっかけだったように感じています。
病院を変えたことで気づいたこと
幼い頃から通っていた病院は、担当医の退職などをきっかけに変更することになりました。
そのとき初めて、自分の状態を「自分の言葉で説明する」必要が出てきました。
しかし私は、
- 過去の手術内容
- 聴力の変化
- どんな場面で困っているか
を、実はきちんと把握できていなかったのです。
小さい頃は、母が医師とのやりとりをしてくれていました。一人で通院するようになってからも、過去の手術内容や経過について、あいまいなままだったのです。
さらに、比較的良かった方の耳にも手術が必要になり、今までと同じように聞こえるとは限らないと思い、不安が強くなりました。
「もしもっと聞こえにくくなったら?」
そんな不安が強くなったことで、
✔ 自分の聞こえ方を理解すること
✔ 周囲に伝える準備をすること
の大切さを実感しました。
同時にこれから先、聞こえにくさとどう向き合っていくのか。自分自身が理解し、必要なときには周囲にも伝えていく。そのためのヒントや言葉が欲しいと感じるようになりました。
そんなときに役立つのが、今回ご紹介する冊子たちです。自分の気持ちや状況を整理するためにも、そして誰かに伝えるときにも、そっと支えてくれる存在だと思っています。
「聞こえに困ったら 〜聞こえにくさを感じ始めているあなたへ〜」
まずご紹介したいのは、特定非営利活動法人 東京都中途失聴・難聴者協会より発行されている「聞こえに困ったら 〜聞こえにくさを感じ始めているあなたへ〜」です。
この冊子の特徴は、
- 自分の聞こえにくさを整理できる
- 困りやすい場面が具体例で紹介されている
- 周囲への伝え方のヒントがある
という点です。
私は手話講習会に通い始めてから、この冊子のことを知りました。
最初に思ったのは、「ヒントや言葉が欲しいと感じていた自分に教えてあげたかったな」ということです。
特に印象に残ったのは、「何が聞こえて、何が聞こえないのかを理解する」という視点でした。
具体的な事例が紹介されているので、これからのことを「自分はどうなんだろう?」と考えるきっかけにもなりました。
私は「聞こえにくい」という一言でまとめていましたが、実際には場面ごとに聞こえ方や困りごとが違います。
そして、聞こえのチェックリストでは、さまざまな困りごとが分かりやすくまとめられています。
それを見ながら、
「そういえば、どこから音がしているのか、だんだんと分からなくなってきたな」
「一人で静かにしていることが、だんだんと楽になってきたな」
そんなことを思いました。
普段は当たり前だと思っていたことも、チェックリストを見ながら振り返ってみると、「これも聞こえにくさと関係していたのかもしれない」と気づくことがあります。
日常のさまざまな場面を振り返りながら、自分の聞こえ方を改めて見つめ直すきっかけになりました。
こちらの冊子は、インターネットから閲覧することができます。
また、第二弾として、家族や周囲の方のための冊子も用意されています。こちらは購入のみとなりますが、身近な人に聞こえにくさを理解してもらうためのツールとして、心強いものだと感じました。
興味のある方は、東京都中途失聴・難聴者協会の案内をご覧ください。
「We Love コミュニケーション」
次にご紹介するのは、聴覚障害者制度改革推進中央本部が発行している「We Love コミュニケーション」です。
聴覚障害者制度改革推進中央本部は、当事者団体と手話通訳・要約筆記などの支援者団体で構成されている組織です。
この冊子では、
- 聞こえにくい人が困る場面
- コミュニケーション方法の選択肢
- 支援のあり方の違い
などが紹介されています。
同じ「難聴」でも、必要な配慮やコミュニケーション方法は人それぞれです。そのことが、とても丁寧に伝えられていると感じました。
こちらは購入が必要ですが、私は区のイベントで、聴覚障害者団体のブースに立ち寄った際に出会いました。
私がこの冊子を読んで感じたのは、「聞こえにくい人への支援」といっても、一つの方法だけではないということでした。
私自身も、補聴器を使えばそれですべて解決すると思っていた時期があります。でも実際には、聞こえにくい場面では、文字で伝えてもらったり、相手の顔を見ながら話してもらったりするなど、いろいろな方法があります。
「聞こえにくい人にはこうすればいい」と一つに決めるのではなく、その人に合ったコミュニケーション方法を考えることが大切なのだと感じました。
また、聞こえにくい人がどのようなことで困るのか、聞こえにくい人を表す言葉や、聴覚障害をめぐるこれまでの歩みについても分かりやすく紹介されており、大人になってから聞こえにくくなった私にとって、改めて知るきっかけになりました。
こうした偶然の出会いも、大切なきっかけになるのだと思います。
We Love コミュニケーション」について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

おわりに
聞こえにくさについて考える中で、私が少しずつ気づいたのは、これは決して「自分一人の努力だけで解決する問題ではない」ということでした。
聞こえにくさは、環境やコミュニケーション方法によっても感じ方が変わります。
例えば、
- 顔が見える位置で話してもらう
- 大事な内容は文字でも共有してもらう
こうした小さな工夫だけでも、理解しやすさは変わります。
互いに少しずつ歩み寄ることで、コミュニケーションは成り立つのだと感じました。
今回は、2冊の冊子を紹介させていただきました。
でも、実際には、静かな場所では気にならなくても、人が多い場所では聞き取りにくかったり、相手の話し方や周囲の音によっても分かりやすさが変わったりします。
そうした違いを一つひとつ振り返ってみると、「自分は何に困っているのか」が少しずつ見えてきます。
困っていることが分かれば、周囲に伝えるときにも、「聞こえにくいので気をつけてください」とだけ伝えるのではなく、「正面から話してもらえると分かりやすい」「大事なことは文字でも確認したい」など、具体的にお願いできるようになります。
もちろん、すぐに自分の聞こえ方を整理できなくてもいいと思います。冊子を読んで、「自分にも当てはまるかもしれない」と思ったところから、少しずつ振り返ってみるだけでもいいのではないでしょうか。
私自身も、もっと早い時期にこうした情報を知っていたら、聞こえにくさについてもう少し具体的に考えたり、周囲に伝えたりできていたかもしれないと思います。
だからこそ、まだ困りごとがそれほど大きくないと感じている段階でも、こうした情報に触れておくことには意味があるのではないかと思っています。
聞こえにくさを感じ始めたばかりの頃は、「まだ大丈夫」と思いたくなる気持ちもあるかもしれません。私自身もそうでした。
けれど、早い段階で情報を知り、自分の状態を理解しておくことが、将来の安心につながると感じています。
もし今、
- なんとなく会話が聞き取りづらい
- 人との会話に疲れやすい
- どう伝えればいいか分からない
と感じている方がいたら、一度こうした冊子を手に取ってみてほしいと思います。
小さな理解の積み重ねが、これからの生活を少し楽にしてくれるかもしれません。
※本記事は筆者の体験に基づく内容です。
症状や治療に関しては個人差がありますので、気になる場合は医療機関へご相談ください。。
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